ykondo813’s diary(旧パワエレ・EMC日記)

高周波、電磁気学、電気回路について勉強したことをまとめたものです

導体中の平面波

 表皮効果を考える前に、導体中の平面波の伝搬について考える。平面波を仮定し、図のような向きでz方向に電磁波が伝搬するとする。すると周波数領域で以下の式が得られる。
  
          図 導体中の平面波
すると周波数領域で以下の式が得られる。
  
  
この常微分方程式の一般解は
  
として
  
となる。ここで添字iは入射波、rは反射波を表す。λは伝搬係数と呼ばれる。λの実部αは減衰定数でβは位相定数(もしくは波数)である。
 α、βについて考える。λは平方根である。これは、複素空間上の偏角が90〜180°となる(物性値とωはすべて正なので)。この平方根なので、λの偏角は45〜90°と、225〜270°となる。これは、αとβは同符号であり、かつ絶対値はβの方が大きいということである。この条件を用いてα、βを求める。λの2乗を取る。
  
実部と虚部を分けることにより、以下の2式が求まる。
  
βを消去してαだけの式にして2次方程式の解の公式を使用する。
  
  
αは実数なので、αの2乗は正でなければならない。よって
  
より
  
となる。同様にしてβを計算すると、
  
  
となる。αとβは同符号である必要があることは先程述べた。一般解はλの正負を使用して
  
と表現しているため、α、βともに正のものだけを採用すれば良い。よってα、βは以下となる。
  
  
次に極限を考えてみる。σがゼロ、すなわち導体ではない場合は、αがゼロとなり、βのみ値を持ち
  
となる。これは当然ながら通常の平面波のときの解と一致する。σが十分に大きい場合、すなわち
  
の場合は、αとβは同じ値に収束し、
  
となる。これは変位電流項を無視して計算した値と一致する。

変位電流と伝導電流の比
 σとωεの比を考える。伝導電流と変位電流をそれぞれ電界Eで表現すると下記となる。
  
ここでJcとJdはそれぞれ伝導電流および変位電流を表す。伝導電流と変位電流の絶対値の比は
  
となるため、σとωεの比は伝導電流と変位電流の大きさの比を意味する。

VHF帯の良導体内部の電磁界
 VHF帯での良導体を考える。良導体の代表としてCu(銅)として、σとωεの比を求める。σ = 5.8e7 S/m、ω=2πf = 6.28e6、良導体の誘電率は真空の誘電率とほぼ同等としてε = 8.854e-12 F/mとして100MHzでのσとωεの比は
  
となり、非常に大きな値となる。これは、導体の中では、伝導電流の方が変位電流より圧倒的に大きいことを意味する。周波数が高くなれば値が小さくなる方向に変化するが、EMCで問題となる周波数は高くてもGHzオーダーであり、それでもこの比は十分大きい。よってEMCで取り扱う周波数範囲では、導体中では伝導電流のみ考慮すれば良い。またσとωεの比が大きいため、先述のα、βは
  
となる。以上をまとめると、良導体中の平面波は以下の解となる。