ykondo813’s diary(旧パワエレ・EMC日記)

高周波、電磁気学、電気回路について勉強したことをまとめたものです

複素誘電率と誘電正接について

高周波の電磁現象を考える際には、誘電体の損失を考慮する必要があります。
特に高速に情報を伝送する伝送線を考えた場合、誘電体による損失は無視できません。

誘電体における損失にて良く出てくるのは誘電正接(tanδ)という考え方です。

Wikipediaでは回路の分野で使われる誘電正接を解説していますが、ここではマクロ的な物性として述べます。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AA%98%E9%9B%BB%E6%AD%A3%E6%8E%A5

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 一般に誘電体は、電界Eを印加しても電束密度Dは瞬時にεEとはならず、遅延を伴う。周期的に正弦波状に振動する電界に対する遅延を考え。電界Eを次式で定義する。
  
この電界E(t)に対してD(t)の位相の遅れをφとする。
  
ここで
  
  
とすると
  
となる。ここで誘電正接は次式で定義され、tanδとも呼ばれる。
  
上記を複素数で記述する。
  
これより複素誘電率となる。すなわち、誘電正接は複素誘電率の実部と虚部の比となる。なお虚部は位相の遅れを表すため、常に負となる。
 次に誘電正接による損失を考える。電界Eによる誘電体のDをdDだけ変化させたときの仕事量は、次式となる。
  
ある時間周期を考え、かつこのエネルギーが損失に変わる場合(温度上昇やその他の仕事に使われない場合)、損失は次式となる。
  
ここで前述の式を再掲し、この2式を使用する。
  
  
すると損失の式は以下となる。
  
これより、損失は複素誘電率の虚部が寄与し、虚部がゼロの場合は損失もゼロということになる。言葉を変えると、位相の遅れがあるということは、誘電率に虚部と等価であり、エネルギー損失に寄与するということである。

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