ykondo813’s diary(旧パワエレ・EMC日記)

高周波、電磁気学、電気回路について勉強したことをまとめたものです

内部インピーダンスを持つ電源と電力の反射

「内部インピーダンスZ0を持った電圧源に対し,入力インピーダンスがZ0の場合,インピーダンスが整合され,無反射となる」という説明がよく出てくるが,これが一体どういうことなのかを電力の観点で考えてみる。
 内部インピーダンスZ0の交流電圧源がインピーダンスZの負荷に接続されている回路を考える。


電源電圧の複素振幅をEとすると,流れる電流iは
  
となる。負荷にかかる電圧は
  
となる。よって負荷で消費される電力は,複素電力Pの実部となる。
  
  
ここで,と置いて,負荷で消費される電力Peをxとyの2変数関数として表す。
  
負荷で消費される電力が最大となる条件を考える。2変数関数での極値問題となるので,x,yの偏微分を考える。
  
yで偏微分した場合、分母は常に正なので、y=-bで傾きがゼロになる。また、y<-bのときは微係数が正、y>-bで微係数が負となるので、y=-bで が極大となる。Peをxで偏微分すると、以下となる。
  
これより、となるときに微係数がゼロとなることが分かる。ここで、aおよびxは、インピーダンスの実部であり、通常インピーダンスの実部が負となることはないので、a, xが正のときのみ考える。xに関する微係数からのときに負荷で消費される電力が極大となることが分かる。ここでyに関する極大条件はxに依存せずに決まるので、負荷で消費される電力が最大となるのは
  
となるとき、すなわち
  
となるときに、負荷で最も電力が消費される。このときの消費電力は
  
である。

 高周波計測の場合、計測器の内部インピーダンスは実部のみなので複素共役を取らずにZ=Z0とする場合が多い。
 
 内部インピーダンスZ0を持つ電源が、最も多くの電力を送ることができるのは、負荷がZ0の複素共役となるときである。ここで考え方として、内部インピーダンスZ0を持つ電源は、Pemaxだけの電力を送ることができ、負荷のインピーダンスがどのような値だったとしても、Pemaxだけの電力を送っているとする。負荷がZ0の複素共役とならないときはPemaxだけの電力を消費することができないが、消費されなかった分は反射して返ってくると考えるのである。