ykondo813’s diary(旧パワエレ・EMC日記)

高周波、電磁気学、電気回路について勉強したことをまとめたものです

*[Sパラメータ]SパラメータとZパラメータの関係式 その1

高周波(マイクロ波)の電気特性の表現によくSパラメータが用いられる。ネットワークアナライザでの測定結果もSパラメータであり、電磁界シミュレータでの計算結果もSパラメータで表現されることが多い。

Sパラメータの基準インピーダンスを変化させたときにどのようにSパラメータを変換すれば良いのかを知りたかったために勉強したので、その内容を公開しようと思う。実際に変換する場合は、Zパラメータのように基準インピーダンスに依存しない量に変換して、再度任意の基準インピーダンスでSパラメータに戻してやれば良いので、ここではSパラメータとZパラメータの関係について議論したい。内容がやや多めになるので、2回に分けて記述する。今回は1ポート(つまり反射係数とインピーダンス)について議論し、NポートのSパラメータについては後日記載する。

参考になるWebページ
http://www.mogami.com/paper/sparameter/sparameter-01.html

勉強になる書籍
http://goo.gl/AUR26
http://goo.gl/QWa2G

1ポートの場合,ZパラメータはインピーダンスZそのものである。数式で定義すると,電圧vと電流iとの関係で表される。
   
Sパラメータの説明に良く出てくる絵で表すと下記のようになる。
   
次にSパラメータを考える。1ポートのSパラメータの定義は入射波に対する反射波の割合である。入射波は電力の反射がないときなので、負荷の入力インピーダンスZが電源側のインピーダンスZ0と等しいときの電圧、電流から求めることができる。
   
  
     :入射電圧の式
     :入射電流の式
     :入射電力の式
入射電力の式は、厳密には電力ではなく、電力の平方根を取ったものである。電力は電圧もしくは電流の2乗の項となり(2倍の周波数となる)、同じ周波数空間では評価しずらくなってしまうため、平方根を取っているのだと思う。

実際に観測される電圧、電流と入射波、反射波の関係は下記となる。
     :電圧Vと入射電圧V1+と反射電圧V1-の関係式
     :電流Iと入射電流I1+と反射電流I1-の関係式
電圧については、入射電圧V1+と反射電圧V1-の和が観測される電圧であり、波動の観点からも納得できる。一方電流に関しては入射I1+と反射I1-の差分で表され、中々ピンとこない。これは後述の式で現れる反射電流I1-を反射電圧V1-と基準インピーダンスZ0の比として符号を変えたくないためだと理解している。
 入射・反射の関係式より、反射波は以下となる。
     :反射電圧の式
     :反射電流の式
     :反射電力の式
Sパラメータは入射波と反射波の比なので、以下となる。
     :S11とインピーダンスZの式
これより、1ポートのSパラメータS11はインピーダンスZと基準インピーダンスZ0で表すことができることが分かる。
 次にインピーダンスZをS11で表すことを考える。先ほど求めたS11の式を変形することにより求めることができる。
   
これはS11が分かればインピーダンスZが分かるということであり、ネットワークアナライザを使用してインピーダンスを求める反射法はこの式に基づいている。(ローデシュワルツの資料に記載http://www.mits.co.jp/study/rohde_n.pdf

SパラメータとインピーダンスZの関係式をより一般的に求める方法を考えてみる。電圧、電流を入射波と反射波成分で表す。
   
   
これを、インピーダンスの定義式V=ZIに代入する。
   
整理してb1に関する式に変形する。
   
ここでb1=S11*a1であり、Sパラメータは入射波と反射波の比として定義されることを考えると、Sパラメータは以下となる。
   
先ほど求めた式と同じものが得られる。
 次にインピーダンスZをS11で表すことを考える。入射波a1は電流I1で表すことができる。
   
これを電圧の式に代入する。
   
インピーダンスの定義は電圧と電流の関係なので、Zは以下となる。
   
こちらも先ほど求めた式と同じとなる。
 1ポートのときのS11とインピーダンスZの関係を求めたが、後者の求め方の方がより複数ポート時での関係式を得やすく、一般化された形である。
 以上で、1ポートのZとS11の関係式についての記述を終える。複数ポートについての式はまた後日記載する。