SパラメータとZパラメータの関係式 その2
前回、1ポートのときのSパラメータとZパラメータ(1ポートの場合はインピーダンス)の関係を書いたが、複数のポートを持つときのSパラメータとZパラメータの関係について記述しようと思う。
以下にnポートの回路図を示す。
各ポートの入射波をa、反射波をbとしてベクトルで表示する。
ここで、下付き添字はポート番号を表す。Sパラメータの定義は入射波に対する反射波の割合なので、以下となる。
ここでSはn×n行列である。Zパラメータの定義を式で表す。各ポートでの電圧をv、電流をiとしてベクトルで表示する。
Zパラメータは、各ポートに電流を与えたときの電圧となるため、行列で表すと以下となる。
ここでZはn×n行列である。各ポートにおける入射波、反射波と電圧、電流の関係式は、各ポートがインピーダンスZ0で終端されているとすると次式となる。
以上よりZパラメータとSパラメータの関係式を求める。Zパラメータの定義式を元に式変形することにより、SパラメータをZパラメータの式として導出する。
電圧、電流を入射波、反射波で表す。
両辺を入射波と反射波で表すよう整理する。ただしIは単位行列を表す。
最後の式は入射波と反射波の関係式を示しており、これはSパラメータの定義式に他ならない。よってSパラメータはZパラメータによって以下のように表せる。
ここで一般に行列Aは下記の性質を持つ。これは同一の固有ベクトルを有する行列は積の交換則を満足するためだが、線形代数に関することなので別途記載したい。
これより、Sパラメータを構成する式の逆行列は、右から掛けても左から掛けてもどちらでも良いので、以下のように表示できる。
つぎにZパラメータをSパラメータで表す。先ほどと同様に、Zパラメータの定義式を変形させて求める。
ここでSパラメータの定義式を用いて、反射波bを入射波aとして表す。
以上よりZパラメータをSパラメータで表すことができた。ここで一般に行列Aは下記の性質を持つ。
以上より、SパラメータでZパラメータを表示するときも、逆行列の積の交換則が成り立ち
となる。これは1ポートの時に求めた関係式
をnポートに拡張したものとなっている。