ykondo813’s diary(旧パワエレ・EMC日記)

高周波、電磁気学、電気回路について勉強したことをまとめたものです

ポートインピーダンスが異なる場合のSパラメータとZパラメータ

 nポートの回路網で各ポートがZ01、Z02、・・・、Z0nで終端されているとする。すなわちポートごとにインピーダンスが異なる場合を考える。ベクトルネットワークアナライザで測定した場合は、通常全てのポートが50Ωで終端された状態になるが、電磁界シミュレータなどで計算した場合は、ポートごとにインピーダンスが異なることがある(というより、任意で設定できたりする)。よってポートのインピーダンスが異なる場合のSパラメータとZパラメータの関係式を示し、任意のインピーダンスに変換できるようにする
 SパラメータおよびZパラメータの定義式を示す。
  
  
ポートごとにインピーダンスが異なる場合は、入射波、反射波と電圧、電流の関係式にかかる基準インピーダンスがポートごとに異なる。
  
ここで、対角行列ζ0を以下のように定義する。
  
この行列を用いて、電圧v、電流iを入射波a、反射波bで表すと下記となる。
  
  

・SパラメータでZパラメータを表す
 先日書いたブログと同様の手順でZパラメータの定義式から関係式を求める。
  
  
Sパラメータの定義式を用いて変形する。
  
これより、
  
となる。よりZパラメータは以下のように表せる。
  
なお、分母に行列があるが、同一固有ベクトルを持つ行列の交換則により逆行列をどちらから掛けても構わないため、分数で表現した。
 ポートのインピーダンスが全て同じでZ0だとすると、行列の全成分にZ0が乗じられたことになるため
  
となり、今まで求めたZパラメータの表示と等価となる。

・ZパラメータでSパラメータを表す
 Zパラメータの定義式から、入射波と反射波の項に分けて、反射波を入射波で表す。
  
  
反射波の入射波に対する割合がSパラメータの定義式なので、
  
となる。こちらも、全てのポートがZ0で終端されている場合、こちらで求めた式と等価となる。

ポートのインピーダンス変換
 SパラメータとZパラメータの関係式が求まれば、あるポートインピーダンスにて分かっているSパラメータから、任意のポートインピーダンスのSパラメータに変換可能である。
 ポートのインピーダンスに関係しないZパラメータに変換して、後で任意のポートのインピーダンスを用いてSパラメータに変換すれば良い。手順は先日書いたとおりである。